SSブログ

山水人

3208394
奄美大島でのテント生活が新鮮で、楽しくて、テントで暮らせるイベントがないかと探しておりましたら、滋賀県の山奥でありました。

山水人というお祭りです。「やまうと」と読みます。

場所は滋賀県唯一の村、朽木村。現在は合併して、高島市になりましたが、前までは唯一の村でした。

その朽木村の奥の奥。生杉という場所。「おいすぎ」と読みます。

大阪から行こうと思いますと、琵琶湖の西側。湖西線に乗りまして、一時間ちょっと。バスに乗って三十分。地域のコミュニティバスに乗り換えて、さらに一時間。乗り換えの待ち時間を合わせると、四時間近くです。

私の実家は、二時間なれば到着しますし、東京に行こうと思っても、四時間もかかりません。余程の山奥です。

近畿の水がめ、琵琶湖。生杉はその琵琶湖の水源地となっています。ブナの原生林があります。

朽木村の九割は山林です。人々は山の中で暮らしています。生杉という地名ですから、その昔、天然杉が一杯生えていたのでしょう。

杉というのは日本固有の植物で、屋久島の縄文杉、奈良の吉野杉など、名高い杉が各地にあります。

ところが、今の日本で多く見られるのは人工的に植えた杉ばかり。

高度成長期、材木が必要となり、大量の税金を投入して杉を植えました。今でも、山を見ると、裾野から頂上まで隙間なく植えてあります。杉を一本植えるごとにお金が貰えたそうです。山を持っている方は、ドングリやブナの木を切って、杉をドンドンと植えました。

現在は海外から安い材木が入ってくるので、切ることが出来ません。以前は杉を切って、四トントラックに積んで出したら、大儲けが出来たそうですが、現在は十トントラックに積んでも、人件費、運搬費で、赤字になります。

赤字になるから、誰も杉を切りません。森が育たない。森というは様々な植物が生えているから、森なのです。杉もあれば、ブナもあり、ドングリもある。

ドングリの木は根が強い。秋になったらドングリが出来ます。動物たちがこれを食べる。根を張るので、土砂崩れが起きない。根に水を貯め、これが湧水となります。ところが、ドングリの木はお金にならない。だから、伐採しました。

一方、植林した杉は根が弱い。土砂崩れが起きます。水を貯めない。春になると、花粉をまき散らす。花粉症で苦しむ方が年々増えています。

生杉には毎年、多くの雪が積もります。都会から、田舎暮らしに憧れて、生杉にやって来た人は、大抵、一年で逃げだすそうです。大雪が降ります。

昔は三メートルも積もったそうです。根雪と言いまして、雪が解けないうちに、さらに新しい雪が降り積もります。玄関が完全に埋まってしまう程の大雪。

朽木村の農具はどれも精巧に作られています。雪で閉ざされた冬に時間をかけて作ったそうです。

現在は積もっても一メートルぐらい。地球の温暖化が進んでいるのでしょうか。

私の小さい頃、実家では、三十センチほどですが、雪が積もりました。最近では滅多に雪が積もりません。

生杉では、大雪が降っても、除雪機がありますから、道に雪はありません。どんな山奥の道でも除雪機が通って、雪かきします。問題なのは玄関から道に出るまで。ここを各自で雪かきしなきゃあなりません。だから、皆さん、自宅に小さな除雪機を持っている。草刈り機みたいなもので、簡単に使える除雪機。ところが、雪が降るまで物置にしまっていますから、雪の日に、その除雪機を取りに行くのが大変なのです。

昔は、杉を切ると、雪の上を滑らせて山から下ろし、春を待つ。やがて、春になると、木で筏を組んで、雪解け水と共に、下流へ流したそうです。生活の知恵ですね。

ところが、現在では、昔と水量は変わっていないのですが、水害を防ぐために、川幅を広くしております。そこで、川が浅くなり、とても筏を組んで下流へ流すことは出来なくなったそうです。

また、昔からの知恵に、池を作るというのがあります。台所の前に池を作りました。池の中には真鯉。雪が積もった時に、この池の中に雪を入れて行く。水で解けて、雪かきが早く進む。雪に閉ざされ、食料がない時には、鯉が食糧にもなります。昔は、台所で洗剤など使いませんでしたから、食べ物のカスがそのまま池に流れます。鯉がそれを餌にする。池から、土掘りを通って川へ流れます。川へ行くまでに生活排水が浄化されます。

ですから、山水人のお祭りでは、石鹸、洗剤、歯磨き粉は使用禁止になっています。石鹸や洗剤がなくても、汚れは落ちますし、歯磨き粉がなくても歯は綺麗になりますし、塩を使えば、さっぱりします。

朽木村では、南西の方角にトイレを作ったそうです。南西は日当たりの良い場所ですから、普通、トイレは作りません。トイレは三つの個室に分かれている。真ん中に小便をするところ。左右に大便をするところ。大便器は、所謂、ぼっとん便所。汲み取り式の便所です。杉の木をくり抜いて作った椀型の大きな便器が地中にはめ込んであって、そこに用を足す。外からは、便所の板を取り外すことが出来て、板を外すと、便器の中に陽が当たる。こうやって発酵させて、時々、棒で混ぜて肥料を作ります。片側を発酵させているときは、反対側の便器を使う。人々の知恵ですね。

山に入った時、地元の方が、木の名前を教えてくれます。
「この木は何でしょうか」
「栗の木じゃ」
「これは堅そうな木ですね。何という名前でしょうか」
「糞混ぜ棒の木じゃ」
本当はネジキという正式名称があるのですが、地元の方は皆、糞混ぜ棒の木と呼んでいます。便所で使う棒は、必ずこの木を使うそうです。

朽木村では南西の方角に便所があるということを初めて知りました。南西と言うと、皆さん、便所を思い出すんですね。講談界では男前ですが。

そんな場所で繰り広げられる山水人のお祭りとは、どのようなものでしょうか。
続きは明日。
3208395

共通テーマ:旅行
お伊勢参り断酒十ヶ月  ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。