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講談毎日亭 一日目 探偵講談琉球ハブ娘 ~悪漢毒婦の再会~ [講談]

ハブ娘とは将棋名人の娘ではないという話。

日本の南方に島があった。
龍が球のような形となり、海に浮かんでいるが如く。
その土地を龍球と名付けました。
後に漢字が変わりまして琉球。

さて、明治14年の沖縄。
鹿児島の代言人(今の弁護士)で横山重富という人がいる。
元は長崎で判事をしておりました。
沖縄へ出張。
首里の宿屋へ泊り、那覇の裁判所へ駕籠で通っている。
駕籠かきは女性。
沖縄の国風として、男性はあまり働かず、女性がよく働く。
途中で茶店がある。
よく見かける若い娘。絶世の美人。

4月3日、神武天皇祭。
横山は近所をブラブラしていると、絹を裂くような女の悲鳴。
若い娘が三人の水夫に絡まれている。
横山がステッキを振り上げて大喝一声。娘を助ける。
いつも茶屋で見かける娘。名前はお亀。
これが本講談の主人公、ハブ娘。
沖縄特産の毒蛇ハブ。
模様は綺麗だが、毒を隠し持っている。
お亀も見た目は綺麗だが、男を殺して金を奪う毒婦であるからハブ娘という仇名が付いた。

横山とお亀が、料亭で話をする。
お亀の父は東恩朝という士族。
悪者に騙され、貧しい暮らし。
お亀は仕方なく、娼妓となった。
内地の旦那に身請けされ、現在は親元へ帰って暮らしている。

酒が取り持つ縁かいな。
横山とお亀は男女の仲となった。

横山の裁判も終わり、鹿児島へ帰ることになった。
東恩朝に金を渡し、お亀を鹿児島へ連れていくことになった。
東恩朝もお亀も涙を流して喜んだ。

その昔、源為朝が妻子を連れて、
琉球から船で出ようとすると、嵐で船が動かない。
「竜神が起こっているに違いない」
そこで妻子を琉球に置いて、本土へ帰った。
それ以来、琉球の国風で、女性を島から出さないようになった。

お亀を内地女性のような格好にさせて、鹿児島へ。
妾宅を構える。

明治14年7月15日。
暑いから、横山とお亀は小舟に乗って桜島温泉へ。
海上、向こうから一艘の舟がやって来る。
三人乗り。
真ん中に美男子好男子。左右に取り巻き。
お亀はその好男子を見て、アッと声を上げる。
男もアッと声を上げる。
船は行き違う。

横山が、
「お亀。どうした。知り合いか」
「那覇の警察官でございます」
「ふーん」

やがて、金波楼という旅館。
宴会騒ぎ。
酔った横山が、
「お亀。あれは警察官ではなかろう」
「はい。実は花魁をしていた時の客でございます。
下関の呉服商、和田弥助という名前。
二、三度相手をしましたが、後で聞けば、
それは偽名で、実のところ、博多小僧と言う悪漢でございます」
「うん。わしが長崎で判事をしていた時、懲役六年を宣告した博多小僧だ。あれから、まだ一年半程。恩赦で外に出られる訳でもなし。どうしてこんなところにいるのだろう。それにお前が警察官だと妙なことをいうから、不思議に思ったのだ」

一泊して、鹿児島へ帰る。

そもそも博多小僧とは一体何者か。
その来歴をお話します。
父は庄屋の岩崎菊右衛門。
子供が二人。姉のお安と、弟菊次郎。
人呼んで博多の菊、博多小僧。

五歳の頃から手癖が悪く、
駄菓子屋で菓子を盗む。
寺から賽銭を盗む。
十歳の時、父が檻に入れたが、その檻を破って、家を出る。
九州、中国、四国、京、大阪。
悪事を重ね、二十歳の時には、名高い悪人。
世の中の金は全て俺の物と思っている。
明治11年。昨年から西南戦争。
九州は景気が良いので、九州へ。
下関の呉服商、和田弥助という偽名で、鹿児島から、沖縄へ。
金を奪っては豪遊する。
廓へ上がる。
ここで出会ったのがお亀。
仲良くなり、夫婦の約束。起請文を取り交わす。

沖縄は探偵が厳しくなり、長崎へ逃げる。
ここで捕まり、横山重富判事から懲役六年を宣告される。
長崎の炭鉱で苦役中。
脱獄して、博多へ。
長崎屋がある。舶来物を売っている。
伊万里からやって来た金持ちが鞄を持っている。
その鞄を盗んで、大金を得る。
博多柳町の一力楼という廓。
馴染みの女郎玉照と芸者小龍。
両手に花。
居続け。
四日目に踏み込んで来た警察官。
警察官に疑われ、縄で結ばれ、しょっ引かれる博多小僧。
見事に逃げる。
大宰府、伊万里、等々。
温泉地を渡り歩いて、桜島へやってきた。
ここで出会ったのが津島の千金丹売り田中文治と種子島の大川勘十郎。
二人とは苦役中、博多の炭鉱で知り合った仲。
悪人三人が出会った。
小舟に乗って、鹿児島へ帰ろう。
これが明治14年7月15日のこと。
向うから小舟が近付いてきた。
乗っているのは洋服を着て、髭を蓄えた、官員風の紳士と、美女。
これが横山とお亀でございます。
互いに見かわす顔と顔。

悪漢、毒婦が海上で再会を致しました。
さて、どのような物語が始まるのでしょうか。
続きは明日。

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